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偽りの思い出

二人が始まった瞬間から、
私があなたを選んだ理由と、あなたが私を選んだ理由には
大きな隔たりがあったね。

でも、あなたの笑顔と優しさをつなぎ合わせたら、
愛情になるような気がしてたんだ。

私が泣くと、いつも頭を抱きかかえて背中をトントンしてくれたね。
キスするかわりに髪をなでてくれたね。
もう泣くなよって言ってくれるから、
余計に涙が止まらなくなっちゃった。
優しくされればされるほど、
愛されていないと感じるなんて悲しいね。

いつか涙を見せずにお別れが言いたかったけど、
私の泣き虫は筋金入りみたい。
あなたはズルイ!あなたなんか大嫌い!
何ひとつ後悔なんかしていないけど、
こんな私に演技力だけは試さないで。

あなたと出会って、二人の子どもにも恵まれて、
ケンカして仲直りして、それでも毎日一緒にいたんだもの。
これだって二人の歴史だよね。
どんなに脆い関係でも、二人の絆だってあったよね。
間違いじゃなかったんだよね。

あなたと共に生きた年月。
誰かと一緒にいるだけで、こんな幸せ気持ちになれるって、
あなたが教えてくれたんだよ。
だから最期にあなたに伝えたい言葉は
「ありがとう」
本当に本当にありがとう。

二人の人生はもう交わらないけど、どうかお願い。
「心からお前を愛していた」と、
あの瞬間の気持ちだけは嘘ではなかったと、
死ぬまでテレパシーを送り続けて。

私は偽りの思い出だけで生きていけるよ。

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