あのとき、たしかに崩れていく音がきこえた。
それはちいさく、はかなく。
耳をすませていなければ聞こえないほどだったから
あたしは気づかないふりをした。
あれから外は雨がふりつづいていたけど
一枚だけ持っていたお気に入りの毛布があったから
あたしは平気だとおもった。
そこはせまくて、窮屈なところだったけど
いごこちがよかったので
ひとりでもさみしくないとおもっていた。
ずっと ずっと いままで
ずっと ずっと これからも
音は次第におおきくなってきて
雨は次第に豪雨に変わり
足元まで流れこんできた。
震える体でお気に入りの毛布にくるまったけど
おもったほどそれはあたたかくなくて。
ひとりっきりの洞穴で。
あたしははじめて泣いたんだ。
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- Date:2005/11/26 02:06
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