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時を越え

「結婚します」と言ったら、
あなたは少し寂しそうに言ってくれた。
「おめでとう。」

話すときにフォークをクルクルと回すくせや、
髭剃りがヘタなことや、ほおづえや。
何一つ変わらない、大好きだったあなたが目の前にいる。

車に乗るときは、必ずドアを開けてくれた。
道を歩くときは、車道側を歩いてくれた。
そんな大人な行動にドキドキしていた、ハタチの小娘だった。

8年前、どんな思いで「一緒になろう」と言ってくれたかなんて、知る由もなかった。
あの頃の私は、まだまだ子供で、一緒になる自信がなかった。
恐かった。

どうして、奥さんや小さな子供を傷つけることができるだろう。
どうして、幸せになんかなれるだろう。
私は、自分のことで精一杯だったんだ。

あなたを忘れたくて、写真や手紙を、全部封印した。
触れることも、捨てることすらできずにいたその箱を8年ぶりに開けてみた。
押し込めたあの頃の想いが、一気にあふれ出した。

もし、あの時のことを許してもらえるのなら、
もし、生まれ変わりがあるのなら、
次は、
あなたと一緒に人生を歩みたい。

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