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寂しいね

平日のデート。
せっかくゆっくり会えたのに外は雨。
天気って意地悪だね。
入梅してからは晴れ続きだったのにどうして?
ホントだったら貴方と紫陽花を見に行くはずだったのに・・・

去年の秋からずっとこう。
紅葉も桜もデートの日に限って雨。
私の望みは叶わないまま。
ただ貴方とお散歩したいだけなのに。
それだけでいいのに、それすら許されないの?

行き先変更して出かけたショッピングセンター。
「前から行ってみたかったんだ」と無邪気に笑うあなた。
でも、あなたが見るのは日曜大工で使う材料。
「庭をきれいにしたら家の内装を少し変えるんだ」
プラモデルを選ぶ子どもみたいなあなた。
自分の城を自分の趣味で飾るのは勝手だけど、
そこに住んでいるのは私じゃないよ。

「これなんかいいんじゃない?でも置いてたら食器になるかもね」
どうして私がそんなアドバイスしなくちゃいけないの?
「そう。飾ってると使われるよ。貴女もそうするでしょ?」
そっか、奥さんの好みで選ぶと飾れないから私なのね。
あなたの無神経さには慣れたけど、やっぱり寂しいよ。

店を出たあとはあなたの腕の中。
「晴れてたら今頃はお花、お花って言ってたのにね」
私を見つめる瞳はいつもと変わらず優しいけど、
私の心は満たされず、いつものようには笑えない。

いつからこんなに欲張りになったのかな。
あなたと過ごせるだけで幸せだったのに、
今はそれだけじゃ寂しいの。イヤだな。
もし晴れでお散歩できていたら、こんなに寂しくなかったのかな。

別れ際、自分の車に乗って横を見る。
悠然と煙草をふかすあなたの横顔。
煙草と一緒に私の気配も消して家に帰るのね。
見送るのは辛いから先に出るよ。
涙が落ちる前にガラスごしに手を振って、もうあなたの車は見ない。

私の町で会うときは、いつからか貴方のほうが先に帰りはじめたね。
そういえば貴方の街に行ったときは私のほうが先に出てるね。

ねぇ、その煙草は貴方を見送る寂しさ感じさせないための一本だと、
勝手に思ってていいかな。

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