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地下鉄

背中越しに彼に哀願する。

「一緒にいたいよ」
「帰りたくないよ」
「帰らないでよ…」

地下鉄のホーム。
逆方向の列車を待つそれぞれの帰り道。
昨日は同じ道を二人歩いたのに…
あなたの声が、温もりが、ここにあったのに…
あれは、しあわせな夢をみてたのかな…

今夜あなたの隣に寄り添えない私は、
確かなものなど何も残されていない、からっぽな私。

薬指に光る指輪も
誓いの言葉も
私とあなたの間には何ひとつ残されず、
二人を繋ぐものはいつだって、
消去寸前のものばかり…

そんな二人の恋の行方。
本当はわかっているはずなのに。

同じ場所には行き着かない。

二人の帰り道。

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